「AWSとGoogle Cloud、どちらも使っているがクラウド間の接続設定が複雑すぎる」——そんな悩みを抱えるIT担当者は少なくないでしょう。複数クラウドを組み合わせるマルチクラウド環境は、ベンダーロックイン回避や最適サービス選択のために多くの企業が採用しています。しかし従来は、VPNトンネルの手動設定やコロケーション施設との調整など、高度な専門知識と多大な工数が必要でした。
その状況を変えるのが、AWSが2026年4月に正式リリース(GA)した「AWS Interconnect - multicloud」です。Google CloudとのプライベートなL3接続を数分で確立でき、2026年後半にはMicrosoft AzureおよびOracle Cloud(OCI)への対応も控えています。本記事では企業のIT担当者向けに、概要・メリット・注意点をわかりやすく解説します。
AWS Interconnect - multicloudとは?従来との何が違うのか

「AWS Interconnect - multicloud」は、AWS VPC(仮想プライベートクラウド)と他クラウドプロバイダーのVPCを、パブリックインターネットを介さずに直接つなぐフルマネージドの接続サービスです。AWS公式によると、同種サービスとしては業界初の専用製品です。
従来のマルチクラウド接続では、以下のような「DIY型」の対応が必要でした。
・VPNトンネルの手動設定・維持管理
・コロケーション施設での物理接続工事(数週間〜数ヶ月のリードタイム)
・サードパーティ製ネットワーク機器の調達・設定
・BGPルーティングの専門知識
これらの手間がなくなり、AWSコンソール上での数回のクリックと数分程度のプロビジョニングで、クラウド間のプライベート高速接続が完成します。ネットワーキングチームが設定作業から解放され、ビジネス価値の高い開発に集中できる点が最大のメリットです。トラフィックはAWSグローバルバックボーンとパートナークラウドのプライベートネットワーク上のみを流れます。
主なスペックと対応状況:帯域1Gbps〜100Gbps、Azure接続も2026年後半予定

2026年4月のGA(一般提供)開始時点での主なスペックは以下のとおりです。
■対応クラウドと帯域幅
・接続先:Google Cloud(GA済み)、Oracle Cloud(プレビュー中)、Azure(2026年後半予定)
・選択可能な帯域幅:1Gbps〜100Gbps(帯域変更は再プロビジョニング不要)
■利用可能なリージョンペア(2026年4月時点)
・米国東部(バージニア北部)↔ Google Cloud 北バージニア
・米国西部(北カリフォルニア)↔ Google Cloud ロサンゼルス
・欧州(ロンドン)↔ Google Cloud ロンドン など計5リージョンペア
※現時点では東京リージョンが対象外です。国内事業のみの企業は今後の対応拡大を待つ必要があります。
■料金体系
料金は「帯域幅」と「地理的距離に基づくティア(Tier 1〜5)」の組み合わせによる時間単位の定額制です。GB単位のデータ転送量課金は発生しないため、大量データを扱う企業ほどコストが安定しやすい設計となっています。
セキュリティとレジリエンス:インターネットを通らないことの意味

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このサービスの最大の特徴が、通信が完全にプライベートネットワーク上で完結する点です。AWSによれば、すべてのトラフィックはAWSグローバルバックボーンとパートナークラウドのプライベートネットワーク上のみを流れ、パブリックインターネットを経由しません。
企業が享受できる主なメリットは以下のとおりです。
・インターネット輻輳の影響を受けにくく、予測可能なレイテンシーと安定したスループットを確保
・盗聴・改ざんリスクを大幅に低減
・VPN暗号化トンネルの管理が不要になり、運用負荷を軽減
さらに接続には4重の冗長性(4-way resiliency)が組み込まれており、単一障害点を排除した高可用性設計です。機密性の高い業務データをクラウド間で連携させる場面や、可用性要件の厳しいシステムのマルチクラウド化を検討する企業にとって、大きな安心材料となるでしょう。
どんな企業・用途に向いているか:活用シナリオ3選

AWS Interconnect - multicloudが特に有効な活用シナリオを3つ紹介します。
■シナリオ1:AIサービスのクロスクラウド活用
AWS上の既存システムから、Google CloudのVertex AIやGeminiなどのAIモデルをセキュアに呼び出す構成が可能です。既存システムを丸ごと移行するコストをかけず、必要なAI機能だけを別クラウドから利用できます。
■シナリオ2:コンプライアンス・データレジデンシー対応
データの保管場所規制や業種別セキュリティ基準を満たすため、特定データをあるクラウドに置き、処理は別クラウドで行う構成をパブリックインターネットを介さずに実現できます。
■シナリオ3:段階的なクラウド移行
全システムを一度に移行するのではなく、一部ワークロードだけを別クラウドに移行しながら既存環境と連携させる「漸進的移行」が低リスクで実践できます。
いずれのケースでも、AWS Transit GatewayやCloud WANと組み合わせることで、複数VPCを一元管理した柔軟なルーティングが実現できます。
導入前に確認すべき注意点と今後の展望

魅力的なサービスである一方、現時点での制約も把握しておく必要があります。
■現時点での制約
・対応リージョンが限定的(東京リージョン未対応)
・AzureとOCIは2026年後半のGA予定であり、スケジュールは変動する可能性がある
・Cloud WANを使用する場合はティア計算が複雑になり、割高な料金が適用されるケースがあるため事前設計が重要
■今後の展望
Azureへの対応が実現すれば、AWS・Google Cloud・Azureという「3大クラウド」間を単一のマネージドサービスでプライベート接続できる環境が整います。現在Azureをメインに使いつつAWSも活用している企業は、今からアーキテクチャの見直しを検討しておくことが推奨されます。
まずはGoogle Cloud対応のGAを活用したPoC(概念実証)を先行させつつ、公式ページの東京リージョン対応情報を定期チェックすることが、スムーズな本番導入への近道です。
よくある質問
AWS Interconnect - multicloudはAWS Direct Connectと何が違うのですか?
Direct Connectはオンプレミス環境とAWSをつなぐサービスですが、Interconnect - multicloudはAWSと他クラウド同士をつなぐ専用サービスです。Direct Connectの基盤を活用しつつ、クラウド間接続に特化した設計となっています。
料金はどのように計算されますか?高額になりませんか?
帯域幅と地理的ティア(距離)の組み合わせによる時間単位の定額制です。GB単位のデータ転送量課金はないため、大量データを扱う企業ほどコストが安定しやすい傾向があります。Cloud WANを利用する場合はティア計算が複雑になるため、AWSの料金シミュレーターで事前試算することを推奨します。
日本のリージョンはまだ使えないのですか?
2026年4月のGA時点では東京リージョン(ap-northeast-1)は対応リージョンペアに含まれていません。国内拠点からの利用を主目的とする場合はAWS公式ページで拡大情報を確認してください。グローバル展開がある企業は海外リージョンでの先行導入が可能です。
Azureとの接続はいつから使えますか?
AWSの公式発表では「2026年後半」とされていますが、具体的な日程は未公表で変更の可能性もあります。Azure対応を前提とした設計を検討中の場合は、まずGoogle Cloud対応のGA版でPoCを先行させつつ、公式情報を随時チェックすることをお勧めします。