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重要データをAIで安全活用——「クローズドAIエージェント」とは何か

「生成AIを業務に使いたいが、社内の機密データを外部サービスに送るのは怖い」——そうした声は、多くの企業のIT・情報システム担当者から今も絶えません。パブリッククラウドのAIサービスは便利な反面、設計図面・契約情報・顧客データといった機密情報の取り扱いには慎重にならざるを得ず、PoC(概念実証)止まりになるケースも少なくないのが現状です。こうした課題に正面から向き合う新サービスが、2026年8月17日に登場しました。NTTドコモビジネスと株式会社エクサウィザーズが共同開発・提供開始した「クローズドAIエージェント」です。本記事では、このサービスの仕組みと特長、導入を検討する際のポイントを分かりやすく解説します。

「クローズドAIエージェント」が登場した背景

「クローズドAIエージェント」が登場した背景

Photo by Igor Omilaev on Unsplash

近年、AIは単にユーザーの質問に答えるチャット型から、自律的に判断・行動する「AIエージェント」へと急速に進化しています。AIエージェントは受注処理・文書審査・ナレッジ検索といった複雑な業務フローを担えるため、企業での活用ニーズは急拡大しています。

しかし、AIエージェントが実際に業務価値を生むためには、社内に蓄積された業務データや顧客情報との連携が必要不可欠です。ここで問題となるのが、データのセキュリティとガバナンスです。

多くの企業では、セキュリティポリシーや業法上の制約から、機密データをパブリッククラウド上のAIサービスに送信することを制限しています。かといって、プライベートクラウドやオンプレミスで自社独自にAI基盤を構築・運用するには、GPU調達・インフラ設計・LLMの運用管理など、高度な技術力と多大なコストが伴います。このジレンマを解消するために開発されたのが「クローズドAIエージェント」です。

サービスの仕組み——閉域ネットワーク+専有GPUで機密データを守る

サービスの仕組み——閉域ネットワーク+専有GPUで機密データを守る

Photo by Growtika on Unsplash

クローズドAIエージェントは、エクサウィザーズのAIエージェント開発・運用プラットフォーム「exaBase Studio」と、NTTドコモビジネスが推進する「AI-Centric ICTプラットフォーム®」構想のインフラ基盤を組み合わせたサービスです。

主な技術的特長は以下のとおりです。

・**お客さま専用の閉域環境**:ユーザー企業ごとに専用に構築された実行環境を、インターネットを経由しない閉域ネットワーク経由で利用します。業務データやプロンプトが外部のAIサービスへ送信されることはありません。

・**専有GPUによる安定性とセキュリティの両立**:専有GPU(Kubernetesアーキテクチャ採用)により、他テナントとリソースを共有しない構成とし、処理性能と隔離性を高水準で確保しています。

・**国産LLM「tsuzumi 2」への対応**:NTT株式会社が開発した大規模言語モデル「tsuzumi 2」やオープンソースLLMを専用環境内で実行可能です。データとAI基盤の双方を国内・自社環境内で完結させる「ソブリンAI」対応環境を実現します。

インフラの構築から運用・保守までをNTTドコモビジネスが担うため、AI基盤の内製が難しい企業でも導入しやすい設計になっています。

どんな業務・業種に向いているか

どんな業務・業種に向いているか

Photo by Simon Kadula on Unsplash

クローズドAIエージェントは、特に以下のような状況にある企業・業種での導入に適しています。

**活用が想定されるシーン:**

- 設計図面や技術文書を参照しながら回答・判断が必要な**製造業**の現場支援

- 契約書・稟議書のレビュー・承認補助など、法的リスクを伴う**法務・コンプライアンス業務**

- 顧客の資産情報を扱うアドバイザリー支援などの**金融・保険業務**

- 個人情報を含む帳票処理や問い合わせ対応の**医療・公共機関**

AIエージェントの開発には、exaBase Studioが提供する業界・業務特化のテンプレートを利用できるため、ゼロからの開発に比べて導入スピードを短縮できる点も魅力です。NTTドコモビジネスが提供する業界別の特化型AIエージェントも組み合わせて活用できます。

一方、社内のIT体制や業務フローの整理が十分でないと、AIエージェントに連携させるデータの品質がボトルネックになる可能性があります。導入前に業務データの整備状況を確認しておくことが重要です。

IT担当者が押さえておくべき導入検討のポイント

IT担当者が押さえておくべき導入検討のポイント

Photo by Alvaro Reyes on Unsplash

クローズドAIエージェントの導入を検討する際、IT担当者として確認すべき主なポイントをまとめます。

**1. データ分類の整理**

どの業務データをAIエージェントに連携させるかを洗い出し、情報の機密レベルに応じた分類を事前に整理しておきましょう。機密レベルの高いデータほど、閉域環境の価値が発揮されます。

**2. 既存システムとの連携要件**

AIエージェントはERPや文書管理システム、CRMなど社内基幹システムとのAPI連携が前提になります。既存システムのAPI提供状況やデータフォーマットを確認し、連携範囲を明確にすることが導入成功の鍵です。

**3. AIガバナンス・利用ポリシーの整備**

AIエージェントが自律的に行動する性質上、誰がどの業務にAIを使えるか、AIの出力結果をどのように人間が確認・承認するかを定めた社内ポリシーの整備が必要です。

**4. 段階的な導入計画**

一度にすべての業務を自動化しようとせず、まず影響範囲の小さい業務プロセスで試験導入し、効果と課題を測定しながら段階的に展開する計画が現実的です。

「パブリックAI」vs「クローズドAI」——使い分けの考え方

クローズドAIエージェントが注目されている背景には、企業のAI活用が「情報漏洩リスクを最小化しながら、どれだけ深く業務に組み込めるか」という段階に入ってきた現実があります。

一般的な使い分けの目安として、以下を参考にしてください。

| 観点 | パブリッククラウド型AI | クローズドAIエージェント |

|---|---|---|

| 機密データの取扱い | 注意が必要 | 閉域環境で完結 |

| 初期コスト | 低め | 専用環境分のコストあり |

| カスタマイズ性 | 限定的 | 高い |

| 運用負荷 | 低め | ベンダーが担う |

| ソブリンAI対応 | 対応困難 | 対応可能 |

機密性の低い社内QAや汎用的な情報整理にはパブリッククラウド型AIを使い、機密データを扱う基幹業務プロセスにはクローズドAIエージェントを活用するハイブリッド運用が現実的な選択肢となるでしょう。各社のセキュリティポリシーや業法規制に照らしながら、最適な組み合わせを検討することが重要です。

よくある質問

クローズドAIエージェントはどのような企業規模を対象としていますか?

NTTドコモビジネスの提供サービスは主に中堅・大企業を対象としていますが、専用GPU環境の構築が伴うため、まずは導入効果が明確に見込める業務から試験的に始めることが推奨されます。詳細はNTTドコモビジネスに個別相談することをお勧めします。

社内のAI基盤をすでに構築している場合でも検討する価値はありますか?

自社でAI基盤を運用している場合でも、GPU調達・LLMのバージョン管理・セキュリティパッチ対応などの運用負荷が課題になるケースがあります。クローズドAIエージェントはインフラ運用をNTTドコモビジネスに委託できるため、社内エンジニアリソースをAIエージェントの業務設計に集中できるメリットがあります。

「ソブリンAI」とは何ですか?なぜ企業にとって重要なのですか?

ソブリンAIとは、データやAI基盤を自国・自社の管理下に置き、海外事業者に依存しない形でAIを運用する考え方です。経済安全保障の観点や、業法上のデータ越境規制への対応として、特に金融・医療・公共分野の企業で重要性が高まっています。

AIエージェントの出力ミスやトラブルが起きた場合の責任はどうなりますか?

AIエージェントはあくまで業務支援ツールであり、最終的な意思決定は人間が行う設計が基本です。導入時には「AIの出力を誰がどのように承認するか」というワークフローを社内ポリシーとして明確に定め、AIガバナンス体制を整備しておくことが不可欠です。

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