「OutlookやTeamsを開くたびにサインイン画面が出て、パスワードを入力しても何度も同じ画面に戻ってしまう」——このような「サインインループ」は、Microsoft 365を利用する企業で頻発するトラブルの一つです。原因はWindowsの認証キャッシュの破損、古い資格情報の競合、WAM(Web Account Manager)と呼ばれる認証基盤の不整合など複数が考えられます。放置するとメール・チャット・ファイル共有がすべて利用不能になるため、迅速な対応が求められます。本記事では、初心者のIT担当者でも順を追って実行できる5つの対処手順を、原因の解説とあわせて紹介します。
サインインループが起きる主な原因

Photo by Ed Hardie on Unsplash
Microsoft 365のサインインループは、単純なパスワード誤りではなく、認証トークンや資格情報の「不整合」によって発生するケースがほとんどです。主な原因を整理すると以下のとおりです。
・古い資格情報の残存:Windowsの「資格情報マネージャー」に過去のアカウント情報が残っており、新しい認証と衝突する。
・WAM(Web Account Manager)キャッシュの破損:Windows 10/11に搭載された認証基盤WAMのトークンキャッシュが壊れ、サインイン状態が正常に保持されない。
・Entra ID(旧Azure AD)のデバイス登録のズレ:マザーボード交換やOSの再インストール後にデバイス登録情報と実機がずれ、認証が通らなくなる。
・MFA強制適用後の未設定:管理者がMFA必須ポリシーを適用したにもかかわらず、ユーザーのMFA設定が完了していない場合もループの原因となる。
まずは「シークレット/InPrivateウィンドウ」でブラウザからMicrosoft 365(office.com)へのサインインを試してみてください。これで正常にサインインできる場合は、デスクトップアプリ側の認証キャッシュが主因である可能性が高いです。
手順1 Officeアプリから一度サインアウトする

Photo by Annika Wischnewsky on Unsplash
まず最もシンプルな対処として、すべてのOfficeアプリから完全にサインアウトします。
1. WordやExcelなど任意のOfficeアプリを開く
2. 左上の「ファイル」→「アカウント」をクリック
3. 「サインアウト」ボタンを押して現在のアカウントを切断
4. OutlookやTeamsも含め、すべてのMicrosoft 365アプリを終了する
5. PCを再起動し、改めてアプリを開いてサインインを試みる
これだけで解決するケースも少なくありません。特に、パスワードを変更した直後や、組織のライセンスが更新されたタイミングで発生した場合に有効です。解決しない場合は次の手順に進んでください。
手順2 資格情報マネージャーの古い情報を削除する

Photo by Ed Hardie on Unsplash
Windowsには「資格情報マネージャー」という各サービスのIDとパスワードを保存しておく機能があります。ここに古いMicrosoftアカウントの情報が残っていると、Windowsが勝手に古い認証情報を参照してしまいループの原因になります。
1. スタートメニューで「資格情報マネージャー」と検索して開く
2. 「Windows 資格情報」タブを選択
3. 一覧の中から「MicrosoftOffice16」「MicrosoftAccount:user=(自分のアドレス)」のような項目を探す
4. 各項目の右にある「▼」をクリックして展開し、「削除」を選択する
5. Microsoftに関連する項目をすべて削除したら、PCを再起動する
注意:削除前に現在のアカウント情報(メールアドレスとパスワード)を手元に控えてください。削除後は次回起動時に改めて入力が必要になります。
手順3 「職場または学校アカウント」を切断・再登録する

Photo by Ed Hardie on Unsplash
Windows 11(および一部のWindows 10)では、Microsoft Entra ID(旧Azure Active Directory)と連携するために「職場または学校アカウント」がWindowsに登録されています。この登録情報が古くなっていたり破損している場合も、サインインループの原因になります。
1. 「スタート」→「設定(歯車アイコン)」→「アカウント」→「職場または学校にアクセスする」を開く
2. 表示されている組織アカウントを選択し、「切断」をクリック
3. 確認ダイアログで「はい」を選択してPCを再起動
4. 再起動後、同じ画面で「接続」をクリックし、組織のメールアドレスとパスワードを入力して再登録する
この操作はデバイス管理(Intune)と連携している場合に影響が出る可能性があります。社内でIntune管理を行っている環境では、必ず情報システム部門に確認してから実施してください。切断後に再接続できない場合は、IT管理者がEntra ID管理センター側のデバイス設定を確認する必要があります。
手順4 WAM認証キャッシュを手動で削除する(上級者向け)

Photo by Team Nocoloco on Unsplash
上記の手順で解決しない場合、WAM(Web Account Manager)のトークンキャッシュが破損している可能性があります。以下のフォルダ内のファイルを手動で削除することでキャッシュをリセットできます。
エクスプローラーのアドレスバーに以下のパスを貼り付けて開き、フォルダ内のファイルをすべて削除してください(フォルダ自体は削除しないこと)。
・%LOCALAPPDATA%\Packages\Microsoft.AAD.BrokerPlugin_cw5n1h2txyewy\AC\TokenBroker\Accounts
・%LOCALAPPDATA%\Microsoft\TokenBroker\Cache
・%LOCALAPPDATA%\Microsoft\IdentityCache
・%LOCALAPPDATA%\Microsoft\Office\16.0\Licensing
削除後はPCを再起動し、Officeアプリを起動して改めてサインインを試みてください。操作に不安がある場合はIT管理者が実施することを推奨します。なお、MicrosoftはWAMの無効化をサポートしていません。WAMを無効にする対処はセキュリティリスクを招く恐れがあるため、実施しないでください。
よくある質問
シークレットウィンドウでもサインインできない場合はどうすればよいですか?
アカウントのパスワードが失効しているか、MFA設定が未完了の可能性があります。IT管理者にMicrosoft 365管理センターでアカウントの状態とMFA設定状況を確認してもらってください。管理者アカウント自体がロックされている場合はMicrosoftサポートへの連絡が必要です。
これらの手順を試しても解決しない場合、次に何を確認すべきですか?
Microsoftのサービス稼働状況(status.office.com)でMicrosoft 365に障害が出ていないか確認します。障害がなければIT管理者がEntra ID管理センターのサインインログでエラーコードを確認し、根本原因を特定するのが次のステップです。
パスワードを変更したらサインインループが起きました。なぜですか?
パスワード変更後は、Windows資格情報マネージャーや各アプリに保存された古いパスワードが残り、認証失敗を引き起こします。手順2の「資格情報マネージャー」から古い情報を削除し、新しいパスワードで再サインインしてください。
複数ユーザーで同時にサインインループが発生した場合、何が原因ですか?
Windows Updateや条件付きアクセスポリシーの変更をきっかけに、テナント内の複数ユーザーで一斉にサインインループが発生するケースがあります。まずMicrosoftのサービス障害状況を確認し、問題がなければ管理者側のポリシー変更を疑ってください。